お酒ボトルへの名入れ彫刻を扱うギフトサロンで働いています、30代の私。
実を言うと、私はお酒を飲むことができません。でも毎日ウイスキーなどのボトルを手にとって、彫刻をして、仕上げていくこの仕事をしていく中で、「飲めないからこそ見えること」「飲めない立場だからこそ感じること」が思っていたよりたくさんあるな、と思うようになりました 。
見た目・デザインの力ってすごい!
味や香りは私には分からないけど、そのぶんボトルそれぞれのビジュアルや質感を大事にしています。
- ガラスの厚さ、透明感、瓶の形のライン。
- ラベルの色・フォント・余白。
- どこに彫刻を入れるか、どのフォント/文字を選ぶか。
たとえば、夕方の陽を浴びて瓶の縁がほんのり光る瞬間とか、彫った文字がさりげなく反射するところを見ると、「わぁ、この瓶、すっごくいいな…」と心がワクワクします。

飲めないからこそ、そういう「視覚で楽しむ美しさ」がとても大切に感じられます。
送る人の気持ち—思いが形になる喜び
お客さまからはよく「誕生日おめでとう」「感謝」「ありがとう」のような言葉を刻むご希望をいただきます。言葉は短くても、そこにはストーリーがたくさん詰まっています。
ギフトを選ぶ瞬間、送る人の頭の中にはたくさんの“想い”が浮かんでいることが多いです。
- 喜んでほしい。
- この人との関係をもっと大切にしたい。
- 特別な日を忘れたくない。
そんな思いを、「このボトルなら、このデザインなら」「この言葉を刻めば」「このフォントなら」…と考えながら形にしていく。
心理学でも、“他人に贈り物をする行為”が自己肯定感を高め、幸福感が持続するというデータがあります。贈るその行為自体が、自分も温かい気持ちになるきっかけになるんだと思います。
飲めない立場だからこそ感じるギフトとしての価値
飲むかどうかじゃなくて、贈ること・残ることがどれだけ大事かが、より鮮明に見えてきます。
誰かを喜ばせたい、誰かを笑顔にしたい、
その瓶を飾ってふと見返したときにその人との時間を思い出せる、
ただ飲むだけじゃなくて、見る/感じる機会があるということ。
飲めない私だからこそ、「味わい以外」=見た目・言葉・思い出・気持ち、という面がとても大きな価値だということを、毎日実感しています。
飲めなくても、“刻めるもの”は確かにある
お酒を飲めなくても、この仕事を通じて確信するのは、お酒ギフトは“飲むためだけのもの”ではなく、“思い出と想いを刻むもの”だということ。
ボトルに刻む一言、贈る人の“あなたを大事に思う気持ち”、受け取る人の“自分を見てくれているという安心”。それらが重なり合うとき、贈った人も、受け取った人も、ぎゅっと心が温かくなる。
だから私は、これからも「言葉」「形」「見た目」に丁寧に向き合いたい。
贈る人も、受け取る人も、どちらも幸せになれるギフトを、ひとつひとつ刻んでいきたいと思っています。