のしとは何か? なぜ必要か?
「のし紙はいかがいたしましょうか?」贈り物を贈る際に聞かれた方も、多いかと思います。
しかし、のし紙とはいったい何で、どうして必要であるのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
「のし」のマナーは難しい?
のし紙には色々な決まりや種類があるため、初めてのし紙が必要な贈り物を用意する場合は「よくわからない!」と思うかもしれません。
しかし元をたどれば「相手のことを大切に思う気持ち」をカタチにしたのが、のし掛けのマナー。
1つ1つの意味を理解すればそれほど難しいことではありません。
こちらでは、これさえ押さえていれば大丈夫! のし紙についての内容をご紹介させていただきます。
なお、のし紙の習慣は地域や宗教(弔辞の場合)によって異なる場合があるため、心配な場合は同じ地域にお住いのご友人・知人、ご家族にご確認いただくことが安心かと存じます。
のしは、日本の贈答の特徴ともいえるものです。
現代の、のし紙は簡単にご説明すると古くに「掛け紙」+「水引」+「熨斗(のし)」で構成していた贈り物の包装方法を、近年になってから簡略化し「掛け紙」に「水引」と「熨斗」を印刷した紙を「のし紙」としたものです。
現代では、贈り物にかける紙を指して「熨斗(のし)」または「のし紙」と呼ぶことも多くなっています。そのため、水引の書かれた紙を「熨斗」と思われる方も多いかもしれません。
しかし実際は、熨斗は折り紙で作られた飾りのことです。紙や封筒の右上に配置されています。
熨斗の由来は、中国で不老長寿の薬考えられている「アワビ」です。
アワビを平たくのした「のしアワビ」を皇帝に献上していたことが、のしの始まりと考えられています。
一方、水引は、和紙をねじってひも状にし、のりで固めた飾り紐のことです。品物を包んだ紙や封筒の中央で結ばれます。
気の置けない相手の場合はのし紙以外のラッピングでも問題はありませんが、のし紙がかかっているとメッセージカード等が無くても「贈り物の目的」と「送り主」が一目でわかるため、受け取る側にも贈り物の趣旨が分かりやすいと言われています。
のし紙とは?どういったときに使うのか?
あくまで略式の贈答体裁であることを忘れずに
のし紙とは、水引とのしを印刷した紙のことを言います。
水引とは、祝儀袋・不祝儀袋などの包みを結ぶ「飾り紐」です。
実際には水引や熨斗をつけていなくても、のし紙を品物につけることで、紙で包んだり、のしをつけたつもりとして「改まった丁寧な気持ちでお贈りします」という意思表示となります。
店舗やデパートで買う贈答品に包装紙などはせずに、のし紙のみをかける場合が多いです。
それは包む手間と時間を省くための略式の贈答体裁だからです。大切な贈り物や意味のある品を送る場合には、のし紙だけでは失礼になることもあるので注意が必要です。
水引の種類・使い分けについて
のし紙は慶事用と弔辞用では印刷されている水引の色や種類が異なります。
お祝い事には紅白や金銀の水引が用いられ、弔辞では黒白や紫白などの水引が用いられます。
送る目的・品物によって使い分けが必要です。
結び方の種類
大きく分けて2種類あります。
【何度あってもよいこと】【繰り返さないことがよいこと】に分けられます。
■蝶結び(花結び)
【蝶結び】は、何度も結び直すことができることから、出産、各種お祝い、中元歳暮など、何度繰り返しても良いお祝い事や、一般贈答に使います。
また、還暦や古希等は一生に一度しかないものですが「長寿祝い」という括りで考えれば繰り返し何度あっても良いお祝い事と捉えられます。 その為、一般的には蝶々結びの水引が用いられます。
しかし、結婚祝い、弔辞や病気お見舞い、災害見舞いなど二度と繰り返さない方がよくないことにはふさわしくないため使用しません。 また、「蝶結び」は、「花結び」とも呼ばれます。
■結び切り
【結び切り】は一度結ぶと端を引っ張ってもほどけないようになっていることから、「二度と繰り返さない」という意味があり、婚礼関係やお見舞い、弔辞全般に使用します。
「結び切り」は、「本結び」とも呼ばれます。 二度とほどけないほどしっかりと固く結ぶ結び方です。
■あわじ結び
【あわじ結び】は「結び切り」と同じく一度結ぶとほどくのが難しい結び方です。
また、両端を持って引っ張るとさらに強く結ばれることから「末永く良きを付き合いを」という意味も込められています。
そのため、「結び切り」と同様に「人生に一度きりでありますように」という願いが込められ、婚礼関連やお見舞い、弔辞全般で使用されますが、見た目が華やかなこともあり、特に結婚祝いなど婚礼関係でよく使用されます。
紐の本数
慶事には、基本的に奇数本数(3本・5本・7本)が使用され、その中でも「5本」が一般的な本数とされています。包む金額や状況に応じて本数を使い分けます。少し丁寧な贈り物や豪華なお祝いの場合には「7本」を使う場合もあります。
9本は「苦」につながることから縁起の悪い数字とされているためあまり使用されません。
ただ、婚礼では「10本」結びが使用されます。新郎新婦二人のお祝いなので両家5本ずつを二重にし、合計10本で「両家がお互いに手と手を結び合っている」という形を表しています。
弔辞には、偶数本数(2本・4本・6本)が使用され、「4本」が基本とされています。
紐の色
■慶事
【紅白】
お祝いごとの慶事全般で使用されます。
【金銀】
結納や結婚祝いで使われます。
その他婚礼以外でも、長寿祝いなど一生に一度のお祝いごとに使われます。
【赤金】
神社で扱われるお札や、正月の門松の飾りに使われます。
■弔辞
【黒白】・【黒銀】
仏事全般で使用されます。
【双銀】
5万円以上を包む場合に使用されることが多いです。
仏事の中でも神式の場合は【双白】が用いられます。
「内のし」「外のし」とは
「内のし」とは品物に直接のし紙をかけて上から包装紙を包むことを指し、「外のし」とは包装紙の上からのしをかけることを指します。
ではなぜ内のしと外のしの2種類があるのでしょうか。それぞれどのような意味があるのか、適切な使い分けについてご説明します。
結論から申し上げますと、のし紙をかけることが大切であり、「内のし」「外のし」の使い分けには厳密な決まりはありません。
ただ、お渡しする状況によって、どちらかがより適切という傾向はあります。
内のしが適切な場合
内のしは包装紙にのし書きが隠れてしまうので、お渡しする時には表書き(贈答品の目的)が見えません。
そのため、主に内祝いに用いられます。
内祝いは現在は「返礼品」と捉えられていますが、もともとは「自分に祝い事があったのでお裾分けします」という意味でした。
相手の慶事をお祝いする贈答品ではないことから、控えめな表現に感じる内のしが内祝いにはおすすめです。
また、かつて贈り物は、風呂敷に包んで相手宅へ持参するのが一般的でした。現在は宅配で贈ることも増え、包装紙が風呂敷に代わるものと言えます。
贈答品を宅送する場合、「外のし」ではのし紙が汚れてしまう恐れがあるため、一般的には「内のし」を選ぶほうがよいとされています。
外のしが適切な場合
外のしは贈答品をお渡しする時、表書きがはっきりと見えます。
贈り物の目的や贈り手が一目でわかるため、贈り物を持参する時や相手先に贈り物がたくさん集まる場合に選ぶとよいでしょう。
お年賀・記念品・引越しの挨拶の品などにも最適です。
のしの書き方
のし紙の上段中央には表書きを記します。この際文字が水引や熨斗にかからないようにしましょう。
下段には表書きより少し小さく贈り主の名前を書き入れます。名前はフルネームで入れるのが一般的です。なお、出産内祝い際の名入れは、生まれた子供の名前のみを書きます。
慶事には濃い墨の毛筆、もしくは筆ペンで書くことが礼儀です。
それに対し、弔辞には薄墨を使用します。これには「悲しみの涙で墨が薄くなった」という意味が含まれています。
また、自己流の崩した文字も失礼に当たりますので、できるだけ丁寧に楷書で書くことが望ましいです。
ただ、最近では筆ペンやサインペン、フェルトペンで書かれることも多くなりました。
しかし、ボールペンは避けた方が良いでしょう。
連名の場合
右位置が上位となるため、年齢や職位が上の方を右から順に書いていきます。
ご夫婦など男女連盟の場合は、男性が右・女性は左です。
特に順位が無い関係の場合は、五十音順で右側から記入します。
大人数の場合は代表者の名前のみを書き、その左側に「他一同」と書くか、「○○部一同」や「有志一同」などとお書きください。
アルファベットを含むお名前の場合
のし紙の名入れは縦書きになります。英数字の社名やお名前に置きまして、もしカタカナでも書ける場合には、カタカナでの記載をおすすめいたします。
表書きの例
無地のしとは
贈り主の名前だけを書いたり、表書きと名前両方を書かないシンプルなのしのことを言います。
一般的にはちょっとしたお礼やお供え物、ご挨拶などの贈り物をする際に無地のし用います。
あまり堅苦しくなく、相手に気を使わせないように無地のしにすることが多いようです。
宅送の場合には、送り状に贈り主の名前もきちんと書かれているため、無地のしを選択される方も多いようです。